『にげて さがして』――あなたの気持ちを応援したい

ヨシタケシンスケさんの絵本『にげて さがして』を読みました。
この時期には、必ずと言っていいほど読みます。

読み終わって、心に残ったのは「逃げる」という言葉でした。

私たちは「逃げる」という言葉に、あまり良い印象を持っていないのかもしれません。

逃げないで頑張ろう。

もう少し我慢してみよう。

乗り越えたらきっと成長できる。

もちろん、踏ん張ることで見えてくるものもあります。

でも、この本を読んで改めて思いました。

逃げることだって、前向きな選択になる。

逃げるのは、何かを変えるため。

そして同時に、変えたくないものを守るためでもあるのだと思います。

場所を変えてもいい。

やり方を変えてもいい。

付き合う人を変えてもいい。

少し休んでもいい。

自分に合う場所を探し直してもいい。

環境を変えることで、自分自身を無理に変えなくてすむことがあります。

「ここでは苦しい」と感じている自分を、「ここでも頑張れる自分」に無理やり変えなくてもいい。

自分を守るためにその場所から離れ、そこからまた、自分が安心していられる人や場所を探していく。

だから、この本のタイトルは「にげて」だけではなく、「にげて さがして」なのだと思いました。

9月を迎える子どもたちへ

夏休みが終わり、学校が始まる9月。

学校へ行くことを楽しみにしている子もいれば、学校のことを考えるだけで不安になる子もいます。

「行かなければ」と思っているけれど、からだが動かない。

友達のことが気になる。

教室に入ることを考えると苦しくなる。

理由は自分でもうまく説明できないけれど、なんとなく怖い。

そんな気持ちを抱えている子もいると思います。

そんなとき、大人として何を伝えたらいいのだろう。

「頑張って学校に行こう」なのか。

「無理しなくていい、休もう」なのか。

考えていて、私がたどり着いたのは、そのどちらでもありませんでした。

「あなたの気持ちを応援したい」

私は、そう伝えたいと思います。

学校へ行きたい。でも怖い。

そう思っているなら、その気持ちを応援したい。

今日はどうしても行けない。

そう感じているなら、その気持ちも大切にしたい。

少し休みたい。

違う場所を探してみたい。

誰かに助けてほしい。

まだ自分でもどうしたいのか分からない。

どの気持ちも、まずはそのまま受け止めたいと思います。

大人が先に「正解」を決めるのではなく、子どもが今どう感じているのかを一緒に考える。

そして必要なら、一緒に逃げる。

一緒に探す。

そんな大人がそばにいることも、子どもにとって一つの安心になるのではないでしょうか。

「逃げる」で終わらない

『にげて さがして』を読んで感じたのは、「逃げてもいいよ」ということだけではありませんでした。

逃げたその先を、一緒に探せばいい。

安心できる場所。

話を聞いてくれる人。

自分を分かろうとしてくれる人。

好きだと思えること。

少し笑える時間。

学校だけが、子どもの世界のすべてではありません。

今いる場所が世界のすべてでもありません。

合わない場所から離れることで、初めて見つけられる場所もあります。

だから9月、学校へ向かうことに不安を感じている子どもたちに、この本を届けたいと思いました。

そして、こんな言葉を添えたいです。

あなたが学校に行くことだけを、応援しているんじゃない。

あなたが休むことだけを、応援しているんでもない。

あなたがどう感じて、どうしたいと思っているのか。

私は、あなたのその気持ちを応援したい。

逃げてもいい。

探してもいい。

立ち止まってもいい。

また動きたくなったら、動けばいい。

変えていいものは、変えていこう。

そして、あなたの中にある大切なものまで、無理に変えなくていい。

『にげて さがして』は、そんなことを優しく伝えてくれる絵本でした。